「毎日ちゃんと単語帳を開いているのに、テストになると全然解けない」
「あいつは部活ばっかりで勉強してないのに、なんで英語の長文が読めるんだ?」
もし君が今、そんな風に悩んでいるなら、「自分には才能がないのかも」という思い込みは今日で終わりにしてほしい。
英語のテストで点が取れないのは、君の頭が悪いからでも、気合が足りないからでもない。
「英語の点数がどうやって作られているか」という、ルールを知らないだけなんだ。
英語は「語学のセンス」なんていう、目に見えないフワフワした言葉で片付けられるものじゃない。人間の脳が言葉を処理する仕組み(認知科学)をひもとけば、数学の公式と同じように、「数式」のように表すことができる。
英語力
= (①単語の瞬発力 × ②語順のルール × ③構造解析力 × ④処理の自動化 )+ ⑤背景知識の推測
君がテストで高得点を取るための力(英語得点力)は、こんな数式になっているんだ。
カッコの中はかけ算になっている。
つまり、この4つの①単語の瞬発力 ②語順のルール ③構造解析力 ④処理の自動化 のうち
どれか1つでも「0」があれば、他の数字がどれだけ高くても、基本となる読解力は「ゼロ」になってしまう。
君の点数が伸びないのは、努力が足りないからではなく、この4つのうちのどこかに「ゼロ(あるいは極端に低い数字)」が隠れているからだ。
それぞれの要素が脳の中でどう働いているのか。そして最後の「足し算(+)」が意味するものは何なのか。具体的なシチュエーションを交えて整理ををしてみよう。
① 単語の瞬発力
英語のすべての基本になるのが単語だ。でも、ここでまず伝えたいことがある。
「apple=りんご」と日本語の意味を言えることが、本当の単語力ではない。
たとえば、「improve(向上させる・改善する)」という単語を見たとき。
君の頭の中には、「向・上・さ・せ・る」という日本語の文字が浮かぶだろうか。 それとも、右肩上がりの矢印や、どんどん状態が良くなっていく「イメージ映像」が浮かぶだろうか。
正解は後者だ。英単語を見た瞬間に、0.1秒でその「映像(イメージ)」がパッと頭に浮かぶこと。これが本当の単語力だ。
人間の脳には、「ワーキングメモリ」という、作業机のように情報を一時的に広げておくスペースがある。
もし長文を読んでいる途中で「improve…えっと、インプルーブはたしか、改善する、だっけ?」と思い出すのに3秒かかっているとしよう。
すると、脳の作業机は広くないため、「単語を思い出す作業」だけでいっぱいになり、文章全体のストーリーを考えるスペースがなくなってしまう。
オンラインゲームで遊ぶとき、ボタンを押してからキャラクターが動くまでに「3秒のラグ(遅れ)」があったら絶対に勝てない。
単語を思い出すのに時間がかかるというのは、脳内でこの通信ラグが起きているのと同じ状態なんだ。だから、長文を読むと頭が処理しきれず真っ白になってしまいやすい。
【今日からやること】
単語をノートに10回書き写す練習を今日でやめよう。代わりに、単語帳を使って「英単語を見る ➔ 0.1秒で意味のイメージを浮かべる ➔ 次の単語へ」という練習に切り替える。1単語にかける時間は長くても3秒。1日100個の単語をパラパラと高速で確認する作業を、毎日繰り返そう。
②文法=語順のルール
「単語の意味は全部わかるのに、文が長くなると並べ替え問題や和訳で間違える」という君は、この「②文法」のスキルが低い。
文法ってなんだか小難しく聞こえるけれど、実は「英語は、単語を置く『順番(場所)』がすべてを決める言語」というルールのことを言っている。
日本語なら、「昨日、公園で、クマを、見た」「クマを、昨日、公園で、見た」と順番をバラバラにしても意味は通じる。「て・に・を・は」という、どこに置いてもくっつく超便利なサポーターのおかげだ。
でも、英語はそうはいかない。
「レゴブロック」と同じだ。正しい順番でカチッとはめ込まないと、絶対に形にならない。
例えば下記の例文を見てみよう。特に主語の部分に注目。
- A:The bear ate the man.(クマが、男を、食べた)
- B:The man ate the bear.(男が、クマを、食べた)
単語の順番をひっくり返しただけで、「どちらが食べられるか」という重大な意味が変わってしまう。英語は、置かれた場所が「主語」や「目的語」を自動的に決めるんだ。
【今日からやること】
知っている単語をパズルのように勘で繋ぎ合わせる「推測読み」をやめる。どんなに長い文でも、「まずは主人公(主語)を探す」「次にその主人公がどうした(動詞)かを探す」。この2つを見つけることから必ずスタートしよう。
③ 構造解析力(巨大なステーキは一口サイズに切れ)
「授業で言われた通り、綺麗に日本語に訳しているのに、いつも時間が足りなくなる」という君は、
「③構造解析」の力が足りていない。
The boy who is playing soccer in the park is my brother.
テスト中にこれを「公園でサッカーをしているその少年は…」と、後ろから綺麗な日本語に訳そうとしていないか?
これをやると、目は文章を行ったり来たりして時間をものすごくロスする。おまけに、脳の作業机はたくさんの単語を一時記憶しなければならず、あっという間にパンクしてしまう。
同時通訳のプロフェッショナルたちは、相手が最後まで喋り終わるのを待ってから綺麗な日本語に訳したりはしない。聞こえてきた順に、前から意味のカタマリごとに訳しているんだ。
【今日からやること】
人間が一度に処理できる情報のカタマリは「4つ前後」だと言われている。電話番号をハイフンで区切るのと同じように、前から意味のカタマリごとに「ぶった斬る(スラッシュリーディング)」をするのだ。
The boy / who is playing soccer / in the park / is / my brother.
(その少年は / サッカーをしている / 公園で / です / 私の兄)
切る場所のコツは、「前置詞(in, at, forなど)の前」や「接続詞(and, becauseなど)の前」。巨大なステーキは喉に詰まるから、一口サイズに切り分けて、前から一つずつ飲み込んでいこう。
④ 処理の自動化(自転車に無意識で乗れるか?)
最初のカッコ内の最後の掛け算は「スピード」だ。
初めてスマホで文字を打ったときのことを思い出してほしい。最初は「『あ』のボタンを3回押して『う』を出して…」と頭で考えていたよね。でも今は、画面を見なくても指が勝手に動くはずだ。この「体が勝手に反応する記憶」を手続き記憶と呼ぶ。
英語も全く同じなんだ。最初は頭で考えて(翻訳して)読む。でも、長文を読むのが異常に早い人たちは、脳内でこの処理が完全に「自動化」されている。
【今日からやること】
特別な才能はいらない。「単語も構造も完璧にわかっている英文を、声に出して読む(音読する)」というトレーニングを繰り返すだけだ。
目で文字を追い、口を動かし、自分の耳で聞く。毎日1つの長文を10回、ネイティブの音声に合わせて音読しよう。これを続けると、やがて脳の処理スピードが「スマホのフリック入力レベル」まで自動化され、英語のまま情景が浮かぶようになる。
+⑤ 背景知識の推測(なぜ、あいつは単語を知らなくても解けるのか)
さて、公式の最後に足し算(+)があるのに気づいただろうか。
君の周りに、「あまり単語を知らないのに、なぜか英語のテストの点数が良いやつ」はいないだろうか。彼らが使っているのが、この最後の足し算である「背景知識(一般常識)からの推測」だ。
たとえば、高校入試の長文で「アメリカからの留学生が、日本の朝ごはんを食べる」ストーリーが出たとしよう。
留学生が朝ごはんを見て、こう言った。
“Oh, what is this sticky and smelly food? I can’t eat it!”
仮に君が、「sticky(ネバネバした)」「smelly(臭い)」という英単語を知らなかったとしよう。
でも、君が「外国人が日本の朝ごはんで驚くものといえば、納豆だ」という背景知識(一般常識)を持っていれば、「あ、納豆を見て驚いているシーンだな」と推測して、前後の問題に正解することができる。
これが、掛け算で「ゼロ」になったエラーを助けてくれる、足し算(推測力)の正体だ。普段からニュースを見たり、色々な本を読んだりして「世の中のこと」を知っている人は、英語のテストで有利に働く場合がある。
ただし、注意してほしい。掛け算の部分(①〜④の基礎)がボロボロなのに、この足し算(推測)だけで点数を取ろうとするのは、ただの当てずっぽうだ。推測力はあくまで「最後に点数を少しだけ底上げするおまけ」でしかないことを忘れないでほしい。
結論:君の「ゼロ」は今、どこにある?
英語力 = (①単語の瞬発力 × ②語順のルール × ③構造解析力 × ④処理の自動化 )+ ⑤背景知識の推測
もし次の模試で点数が悪かったとき、「あーあ、やっぱりダメだ。才能ないや」とため息をつくのは今日で終わりにしよう。
そうじゃなくて、冷徹に自分のデータを分析するのが先決だ。
- 知らない単語が多すぎたなら、「①単語の瞬発力(0.1秒でイメージ化)」を鍛える。
- 並べ替え問題でミスをするなら、勘に頼らず「②語順のルール」の理解に戻る。
- 綺麗な日本語にしようとして時間が足りなくなったなら、「③構造解析力(スラッシュリーディング)」の練習をする。
- 長文の途中で頭が真っ白になるなら、「④処理の自動化(音読)」が足りていない証拠だ。
君がやるべきなのは、感情論で落ち込むことじゃない。自分のつまずいている「原因」をこの公式からピンポイントで見つけ出し、そこを徹底的に勉強することだ。
英語はセンスじゃない。
正しい科学のルールを知り、正しい順番で攻略していけば、必ずクリアできるロジカルなゲームなんだ。
さて、君の弱点はどこにあるだろうか。
【図解】


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